このたび、空気環境改善研究所(空環研)代表石坂が執筆した論文
「Indoor air quality and health risk assessment of α-pinene, D-limonene, and
Total Volatile Organic Compounds(TVOC) in newly constructed」
「新築木造住宅における α-ピネン、D-リモネン、およびTVOCの室内濃度と健康リスク評価」
の研究論文が、大気環境分野の国際学術誌 Atmospheric Environment に正式掲載されました。
📄 論文公開ページ(ScienceDirect)
🔗 Indoor air quality and health risk assessment of α-pinene, D-limonene, and Total Volatile Organic Compounds (TVOC) in newly constructed wooden houses
■ 研究の背景http://論文はこちらへ
日本では高断熱・高気密住宅が急速に普及し、室内空気質への注目が世界的にも高まっています。
これまでのシックハウス対策は一部の化学物質に限られていましたが、
木材由来のVOCs(α-ピネン等)の健康影響については十分なデータがありませんでした。
空環研では、実際の新築55戸を対象に、独自の受動サンプリング法(エアみる法)を用い、
木材由来成分を含む多種類の化学物質を測定し、健康リスクを評価しました。
■ 主な研究結果
🟢 1. 新築後すぐの濃度は一時的に高いが、数ヶ月で急速に低下
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α-ピネン・D-リモネンはいずれも 時間とともに急速に低下する ことが確認されました。
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80%の住宅が、ドイツのガイドライン(RWⅡ)を下回る安全域。
🟢 2. 日本の室内濃度ガイドラインに対し、規制物質を超過したのは「スチレン1件のみ」
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スチレンは接着剤由来ですが、木材由来成分はガイドライン対象外。
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ただし、**木材由来成分+接着剤成分の“混合影響”**には注意が必要。
🟢 3. 木材由来VOCsは“自然の香り”として評価されることも
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調査した住まい手からは「心地よい香り」という声も多く、
木材の香り=悪ではなく、量とタイミングが重要であることがわかりました。
■ この研究が示すこと
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適切に換気される新築木造住宅のリスクは一般に低い。
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ただし、引渡し直後の濃度が一時的に高くなるため、
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入居前の換気
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引渡し前の空気測定(エアみる法)
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接着剤・塗料の最小化
が 健康的な住環境の決め手 になる。
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空環研としては、今後も「科学的根拠に基づく家づくり」を推進し、
多くの事業者・住まい手が安全な住環境を選べる社会づくりを目指します。
■ 最後に
今回の研究は、全国の工務店・メーカー・住まい手の皆さまの協力なしには成立しませんでした。
ここに心より感謝申し上げます。
引き続き空環研では、
“見えない空気を見える化する” 新しい住宅評価モデルづくりを進めていきます。
