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なぜ家の中に農薬をまくことができるか、健康な防蟻処理の話_空環研通信2024年7月

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 なぜ家の中に農薬をまくことができるか?

畑や果樹園の前を通る時に農薬を散布していると、吸い込まないように気にする人は多いと思います。農薬は体に有害だからです。では、防蟻処理として住宅内に農薬をまいていいのはなぜでしょう。

動画で内容をご覧になりたい方はこちらからどうぞ(13分の動画です)☞https://youtu.be/8-iIwO3PEPY

要約

ネオニコチノイド農薬は新しいニコチン系の農薬で、防蟻処理として住宅に使用されることがあります。シロアリ対策としての使用が許可されていますが、健康へのリスクも存在します。具体的なリスクとその対策について説明します。

この記事のポイント
前半
- 喫煙と住宅に使われるニコチンの関係
- ネオニコチノイド農薬の影響
- シロアリ対策と健康リスクのバランス
後半
- シロアリの判別方法と玄関の注意点
- 新築時にしかできないシロアリ対策
- アメリカカンザイシロアリの脅威

喫煙と住宅に使われるニコチンの関係

ネオニコチノイドとニコチン
飲食店の看板には「喫煙が可能な飲食店」と表示するルールがありますが、これは喫煙が体に悪いという理由からです。タバコの成分の中で、3大有害成分は ニコチン・タール・一酸化炭素です。特にニコチンは成長過程の子供に有害とされています。このニコチンが住宅にも使われていることをご存知でしょうか?それがネオニコチノイド農薬です。

ネオニコチノイド農薬とは

ネオニコチノイド農薬は、元々タバコに含まれるニコチンを基にして開発された新しいタイプの農薬です。この農薬は、害虫の神経系を攻撃するため、効果的に害虫を駆除することができます。安全性が高いとされていますが、この安全とは発がん性がみられないという意味です。人間の健康、特に子供の神経発達に影響を及ぼす可能性があるため、その使用には注意が必要とされています。また蜜蜂が減った原因の一つであるとも言われており、EUでは使用が禁止されています。

なぜ家の無くに農薬をまくことができるか?

ネオニコチノイドの「ネオ」は新しいという意味で、新しいニコチン系の農薬です。これは主に防蟻処理として住宅に使用されます。シロアリ対策として使われることが許可されており、住宅内での使用が認められています。なぜ、そもそも農薬は家の外で使用するものですが、なぜ住宅内の使用が認められているのでしょうか。

シロアリ対策をしないと、家がシロアリに食われて弱くなり、最悪の場合家が倒れてしまうリスクがあります。これは命に関わる問題です。そのため、健康リスクを減らすために農薬を使用することは仕方のないこととされています。命か農薬かという選択肢がある場合、間違いなく命が優先されるのは想像しやすいと思います。これをリスクのトレードオフと言います。身近な例でいうと防腐剤です。食品中の防腐剤と食中毒のリスクを比較した場合に、食中毒の方がリスクが高いです。なので、食品添加物が使われています。

つまりリスクの大小を比較して、法規制があり、その法規制の中で私たちに選択する権利があるわけです。なので、防蟻処理は有益な方法であるわけですが、より健康で暮らしたいという軸を持っている人は、ネオニコチノイド系農薬が健康に悪い影響を与える可能性があることも知っておく必要がありますし、ネオニコチノイド以外に選択肢も知っておく必要があるわけです。

 

ネオニコチノイド農薬の健康リスクを考慮し、ホウ酸処理を選択

ネオニコチノイド系農薬の具体的な影響として、子供の脳神経の発達に影響し、学習や集中力、行動、認知機能に悪影響を与える可能性があります。また、精神伝達物質であるオキシトシンやセロトニンの分泌が弱くなり、感情や行動に悪影響を与える可能性があることが神戸大学のラットを使った研究結果より明らかとなっています。オキシトシンは「幸せホルモン」として知られ、他者を慈しむ感情を持つホルモンです。このホルモンの分泌が弱まることで、精神的な問題が生じることがあります。ラットの実験結果が人間にそのまま適用できないのでは?という意見もあります。全くその通りです。医薬品は動物実験、臨床試験を繰り返し行って、効果や副作用などが評価され、やっと使用することができますが、農薬は人に使うことを対象としていませんので、人間への影響を調べることができません。なので、安全だということは断言できないのです。

ネオニコチノイド農薬の成分が室内に拡散することで、家の中にいる人々に影響を与えることがあります。例えば、床下に散布された農薬が室内の通気口を通じて1階や2階にも広がり、室内空気中から検出されることがあります。東京都で行われた研究では、新築の家で防御処理として使用された農薬が、3年7ヶ月経過した後でも高い濃度で検出された事例があります。

ホウ酸という選択肢

ホウ酸は食品添加物として使用されており、過剰に摂取しなければ安全です。また、無機物ですので固体として存在しますので、大量曝露の心配もありません。決められた濃度の水溶液を作成して、しっかりと噴霧すれば効果は永続します。

ネオニコチノイド系農薬とホウ酸、どちらを選択しますか?

コツをつかめば簡単!シロアリの判別方法

シロアリを見分ける方法として、羽の形がポイントです。シロアリは4枚の羽を持っており、閉じていると2枚にしか見えませんが、広げたときに同じサイズの羽が4枚あります。これがシロアリの特徴です。シロアリはゴキブリの仲間であり、そのずん胴な形態からも判別が可能です。

シロアリの見分け方を知っておくことで、早期に対策を講じることができます。シロアリの被害が広がる前に、専門家に相談し、適切な防除措置を取ることが重要です。

シロアリ対策、玄関が大事。玄関を水で洗うのはNG

シロアリ対策において、玄関周りの管理が重要です。玄関のタイルを水でジャブジャブ洗うのは避けてください。玄関のタイルは軽く洗う程度にとどめ、水が下に浸透しないように注意することが大切です。水がタイルの下にあるコンクリートにまで到達すると、湿気がシロアリを引き寄せる原因になります。特に玄関周りは床下の空間がないため点検するのが難しく、湿気がこもりやすくシロアリの侵入リスクが高まります。

その他にも、ウッドデッキや庭の植物、家の周りに木材を放置しておくこともリスクが高まる原因となります。

 新築時にしかできないシロアリ対策

新築時に行うシロアリ対策は非常に重要です。一度施工したら半永久的に持続する方法を選び、定期的に観察して被害が起きていないか確認することが健康的でコストパフォーマンスも高いです。家を建てている途中でしか行えない処理があるため、長期的な視点での対策が必要です。

新築時にホウ酸による適切な防蟻処理を行うことで、長期間にわたってシロアリの被害を防ぐことができます。5年に一度の再処理の必要が農薬とは異なり、ランニングコストも削減できます。

アメリカカンザイシロアリの脅威

日本のアメリカカンザイシロアリの被害発見エリア

引用および参考:https://borate.jp/amekan/

アメリカカンザイシロアリは、日本でも被害が広がっている危険なシロアリです。特に東京や神奈川県、横浜では被害が報告されています。ヤマトシロアリやイエシロアリは床下から住宅内に侵入してくることが多いですが、アメリカカンザイシロアリは住宅の上部、屋根や壁からも侵入してくるため、予想外の被害が発生することがあります。輸入品や米軍の関連施設から広がっていることもあり、注意が必要です。

アメリカカンザイシロアリは非常に強力な害虫であり、一度侵入されると被害が広がりやすいです。早期に対策を講じることが重要です。

 

まとめ

ネオニコチノイド農薬の使用には、シロアリ対策としてのメリットがある一方で、健康リスクも存在します。これを理解した上で、リスクの低いシロアリ対策としてホウ酸を選択することが重要です。住宅の安全を守るためには、適切な知識と対策が必要です。

 

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  • この記事を書いた人

空環研_石坂

空気環境改善研究所代表理事 石坂閣啓(イシザカタカヒロ) 三浦工業株式会社入社後、三浦環境科学研究所に配属 その後愛媛大学に出向、大学院農学研究科の環境産業科学研究室の助教を経て独立。 室内中の100種類以上の化学物質が検出可能な「エアみる」を使った空気測定を使って令和のシックハウス対策に取り組む 専門:室内空気中の化学物質汚染

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