要約
室内空気中には100から1000種類以上の化学物質が存在すると言われています。これらの化学物質の多くは私たちの健康に影響を与える可能性があります。本記事では、特によく検出される100種類程度の化学物質について、測定方法やその影響について詳しく解説します。エアみる法を用いた測定方法の特徴や、測定が難しい化学物質についても触れています。
なぜ124種の測定が必要か
※一般的なシックハウス検査では、ホルムアルデヒド、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、スチレン、p-ジクロロベンゼンのわずか6種類しか測定対象としていません。
しかし、これら6種類の化学物質は現在ではほとんど建材に使用されていません。令和のシックハウス対策は、これらの代替物質である室内からよく検出される124種類の化学物質に対策を講じる必要があります。動画で詳しく解説しています。
124種の化学物質にはどのようなものがある
室内空気中の化学物質は100から1000種類以上存在すると言われていますが、実際によく検出されるのは約100種類です。これらの化学物質は、厚生労働省の調査や研究者の調査によって明らかにされています。
空気環境改善研究所は、これらのデータや論文等を集計し、よく検出されている124種類の化学物質をピックアップしました。いずれもエアみるで測定することが可能です。
中でも全体としての割合が多いのは、脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素です。これらはいわゆる溶剤成分で、疎水性の化学物質を溶解する薬剤です。塗料や接着剤など、健康に影響が出やすいものが多く含まれています。
その他には、水溶性の塗料の溶剤として使用されることが近年多くなっているグリコールやグリコールエーテル類、また木材成分からの揮発成分であるテルペン類などがあります。その他の成分も溶剤成分として使われることが多いです。エステル、アルデヒド、アルコール類、炭化水素、ケトン類など、一般的な化学物質が含まれます。
上図 室内からよく検出される揮発性有機化合物124種の種別の割合
参考資料
建築で使われている化学物質に関しては、書籍「建築に使われる化学物質事典」(風土社)を参考にしています。その他、様々な文献を参考にして124種類の化学物質をピックアップしました。
管理 番号 |
引用文献 | 発行 |
1 | 建築に使われる化学物質辞典 | 風土社 |
2 | 樹木揮発性微量成分の化学と効用 | 木材学会誌 |
3 | 木質建材から放散される揮発性有機化合物の評価と快適性増進効果の解明 | 独立行政法人 森林総合研究所 |
4 | 近年の室内空気汚染問題について:未規制物質による健康リスク | 日本リスク研究学学会誌 |
5 | ヘアケア製品由来の環状シロキサンが室内に及ぼす影響 | 東京都健康安全研研究センター年報 |
6 | 室内環境の辞典 | 朝倉書店 |
7 | 室内からよく検出される揮発性有機化合物として挙げられた物質:シックハウス問題に関する検討会資料より作成 | 厚生労働省シックハウス問題に関する検討会 |
8 | 室内空気中総揮発性有機化合物(TVOC)測定用 パッシブサンプラーの開発研究 | 環境化学 |
9 | 生存圏化学の新領域開拓ロングライフイノベーション共同研究最終成果報告 | 京都大学生存圏研究所 |
よく検出される化学物質
エアみるで測定可能な124種類の化学物質の中で、特に多いのは脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素です。これらは塗料や接着剤などに含まれており、健康に影響を与える可能性が高いです。また、水溶性の塗料の溶剤として使用されるグリコールやグリコールエーテル類、木材成分からの揮発成分であるテルペン類もよく検出されます。
エアみる法の概要
エアみる法は、室内空気中の化学物質を測定するための有効な方法です。この方法で測定できる項目には以下の3つの重要なポイントがあります。
- 室内空気中の汚れ具合(簡易TVOC濃度)
- エアみる法は、室内空気中の総揮発性有機化合物(TVOC)濃度を測定します。これにより、室内の空気の汚れ具合を簡単に把握することができます。
- TVOC(総揮発性有機化合物)濃度は、複数の揮発性有機化合物の総量を示す指標です。高いTVOC濃度は、健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、室内環境の管理において重要です。
- TVOCを構成する上位5成分
- エアみる法では、124種類以上の化学物質の検出が可能です。その中でも、特に頻繁に検出される上位5成分を特定し、詳細な分析を行います。
- 特に上位5成分に塗料や接着剤の成分が含まれる場合は、長時間の曝露が健康に影響を与える可能性があります。
- 室内濃度指針値物質
- エアみる法は、以下の6つの化学物質について、室内濃度指針値を参考に測定を行います。
- トルエン
- エチルベンゼン
- キシレン
- スチレン
- p-ジクロロベンゼン
- テトラデカン
- これらの化学物質は、室内濃度が一定の指針値を超えると健康リスクが高まるため、測定と管理が重要です。
- エアみる法は、以下の6つの化学物質について、室内濃度指針値を参考に測定を行います。
エアみる法では測定が難しい化学物質
エアみる法では、特定の化学物質の測定が難しい場合があります。以下に、測定が難しい化学物質とその理由を詳しく説明します。
- ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド
- これらの物質は、シックハウスの原因物質としても有名です。非常に分解しやすいため、誘導体化という特殊な処理を行い、分解しないように安定化させて液体クロマトグラフ質量分析装置で測定します。そのため、エアみる法とは測定の原理が異なるため、同時に測定することができません。(ホルムアルデヒド測定はオプションで測定項目に追加することが可能です。)
- ネオニコチノイド系農薬
- これらの農薬は準揮発性有機化合物として、気体ではなく固体として存在するため、エアみる法では測定が難しいです。室内空気中のダスト(埃)成分として存在するため、気体成分のみを測定するエアみる法では対応できません。
- フタル酸エステル類、リン酸エステル類、臭素系難燃剤
- これらも準揮発性有機化合物として固体で存在し、エアみる法での測定が難しい化学物質です。
- 柔軟剤の香り成分、抗菌成分、消臭成分
- 柔軟剤の特定の香り成分が大量に長時間存在すると検出されることがありますが、香成分の多くは複数の化学物質の混合物であり、それぞれの成分は低濃度のため検出が難しいです。また、抗菌成分や消臭成分の多くは揮発性成分ではないため、測定することができません。
エアみる法の有効性
エアみる法は、新築時の化学物質の影響や持ち込み家具の影響を確認するために非常に有効です。室内に化学物質の汚染源が存在するかどうかを確認するのに適しています。しかし、外部からの化学物質汚染や準揮発性の成分の測定には不向きです。
まとめ
エアみる法は、室内空気中の化学物質の測定に非常に有効な方法です。特に、室内に継続して存在する化学物質の汚染源を特定するのに役立ちます。一方で、一部の化学物質については測定が難しいため、他の方法や対策を検討する必要があります。
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