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第27回シックハウス問題に関する検討会振り返りまとめ

第27回シックハウス問題に関する検討会の主な内容

  1. エチルベンゼンの新指針値改定
    改定前の指針値は3800 µg/m³でしたが、改定後は370 µg/m³に引き下げられました。これは、最新の科学的知見に基づいて室内汚染状況の変化を反映したものです。
  2. 指針値追加候補物質のリスク評価結果(再確認)
    新たに指針値に追加が検討されていた、2‐エチル‐1‐ヘキサノール、テキサノール、TXIBの3物質の初期リスク評価が行われ、現段階では追加の必要がないと判断されていました。
  3. 標準的測定方法の改定
    各種マニュアルが整理され、一つの統一されたマニュアルとなりました。また、用語の微調整も行われ、よりわかりやすくなっています。
  4. 中間まとめと今後について
    第24回から第27回までの検討会の内容をまとめた中間報告書が公開され、これに対するパブリックコメントが予定されています。その結果を受け、指針値の改定は2026年4月ごろから実施される見込みです。

動画で確認(23分)

最近の検討会では、エチルベンゼンの室内濃度指針値の改定とともに、標準的な測定方法の見直しが発表されました。これまでは、各種のマニュアルがホームページに散在しており、どこを見ればよいのか分かりにくいという問題がありましたが、今回の改定により、それらが一つのマニュアルに統一されました。この変更により、より使いやすく、情報が整理された形で提供されるようになりました。また、従来の「新築住宅測定法」や「居住住宅測定法」という名称も、「築住宅測定法」や「最大濃度推定法」に変更され、より直感的で理解しやすい表現になっています。

さらに、第24回から第27回までの検討会の内容がまとめられた中間報告書が総合版として公開されており、これに対してパブリックコメントが行われる予定です。このパブリックコメントを受けて、正式な決定が行われるのはおそらく2026年ごろになると見込まれています。これにより、室内環境の安全基準がさらに現実的なものとなり、さらなる改善が期待されます。

補足説明

室内濃度指針値とは?

室内濃度指針値とは、人が特定の化学物質に一生を通じて一定の濃度以下で曝露されたとしても、健康に有害な影響を受けないと判断された値です。これは非常に厳しい基準であり、新たに設定される指針値がその物質が必ずしも有害であることを意味するわけではありません。一時的に基準値を超えても健康に直ちに害を及ぼすものではなく、あくまで長期的な安全性を考慮した目安として用いられます。

 

エチルベンゼンと指針値改定の背景

エチルベンゼンは、溶剤としてよく使用される化学物質であり、特に住宅建設での塗料や接着剤に用いられてきました。2000年頃には多くの住宅で使用され、室内汚染の主要な原因の一つとされていました。今回の改定で指針値が厳しくなる理由は、近年の室内汚染状況の変化にあります。厚生労働省の国立機関が実施した調査によると、現在の室内空気の質は過去と比べて大幅に改善されていることが分かり、そのデータに基づいて指針値が見直されることとなりました。

指針値の改定には「キー・スタディ」と呼ばれる基準研究が使用されます。エチルベンゼンの場合、最も厳しい基準として採用されたのは、ラットを使用した13週間の反復吸入試験です。この研究結果を元に、不確実係数をかけ合わせて人間への安全な指針値が算出されました。

指針値の決定について詳しく知りたい方は動画で解説しております。

今後の対策と指針値の見直し

新たな指針値の改定は、室内環境の改善を目的としたものです。既存の指針物質の見直しに加えて、新しい物質の追加も検討されています。たとえば、「2ーエチル‐1‐ヘキサノール」や「テキサノール」「TXIB」などの物質が新たな指針値の候補として挙げられていますが、現段階では追加は見送られる形になりました。これらの物質の室内濃度が室内中で十分に低く、健康リスクが低い十分に安全であると判断されたためです。

 

クリティカルシンキング

2‐エチルー1‐ヘキサノール、テキサノール、TXIB など、室内濃度指針値への追加が検討されていた物質の追加見送りについて、様々な議論が必要であると考えております。

特に、実態調査におけるサンプリング場所の適正性や、採用された動物実験のデータと過去のデータとの違い、その違いの説明については重要なポイントです。また、TXIBなど、室内濃度がかなり高い状況でも安全であるという今回の判断が、逆にこれらの物質の使用を促進する結果にならないか、といった疑問もあります。

これらの点について、パブリックコメントを通じて意見を提出することが有効ではないかと考えております。この件についてご意見がある方や、一緒にパブリックコメントを提出したいという方がいらっしゃいましたら、ご連絡いただければ幸いです。

 

まとめとお礼

今回の指針値改定と標準的な測定方法の見直し、そして検討会の進め方の更新は、私たちの生活環境をより安全にするための重要な進展です。今回の審議に関わった委員の先生や室内空気の実態調査という大変重要で大変大変な作業に取り組まれた国立衛研の先生方に感謝します。また、業界関係者の方からたくさんの取組み事例が紹介され、室内濃度指針値という課題に一丸となって取り組んでおられる様子がわかりました。

今後も新しい研究とデータに基づき、さらなる改善が期待されています。室内の空気の質を保つために、最新の情報を把握し、必要に応じて対策を講じることが重要です。シックハウス症候群を予防し、健康的な生活を送るためには、日々の注意と対策が欠かせません。


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  • この記事を書いた人

空環研_石坂

空気環境改善研究所代表理事 石坂閣啓(イシザカタカヒロ) 三浦工業株式会社入社後、三浦環境科学研究所に配属 その後愛媛大学に出向、大学院農学研究科の環境産業科学研究室の助教を経て独立。 室内中の100種類以上の化学物質が検出可能な「エアみる」を使った空気測定を使って令和のシックハウス対策に取り組む 専門:室内空気中の化学物質汚染

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