つぶやき

工務店が直面する本当の危機需要縮小とコスト増、そし「維持できない住宅」のリスク

住宅業界はいま、単なる景気変動では説明できない変化に直面しています。 需要縮小とコスト増が同時に進む中で、「建てること」だけではなく、「長く維持できる家」をどう考えるかが重要になっているのかもしれません。

こんな変化を感じていませんか?

  • 建材・設備・人件費など、住宅コストが上がり続けている
  • 価格競争が激しくなり、利益確保が難しくなっている
  • 高性能住宅の維持管理に不安を感じる場面が増えている
  • 空気環境や換気トラブルへの相談が増えている

需要縮小とコスト増が同時に起きる時代へ

住宅業界はいま、大きな転換点にあります。

建材価格、人件費、設備費、物流費、金利。 家づくりに関わる多くのコストが上がっています。

一方で、住宅需要は以前のように伸びているわけではありません。 少子化が進み、新築着工数は減少傾向にあり、家を建てる人の所得余力も小さくなっています。

普通のインフレであれば、賃金が上がり、需要が伸び、その結果として価格も上がります。

しかし現在の住宅業界では、需要が弱くなっているにもかかわらず、コストだけが上がっているという構造があります。

今の住宅業界にとって難しいのは、「売れないのにコストが上がる」という状況が同時に進んでいる点にあります。

家を買う余力が小さくなっている

お客様にとって負担となるのは、住宅価格だけではありません。

ローン金利、光熱費、保険料、税金、修繕費。 家を建てた後に必要となる費用も上がっています。

つまり、家を買う余力だけでなく、住み続けるための余力も小さくなっているということです。

このような状況では、どうしても初期費用の安さに目が向きやすくなります。

  • 性能より価格
  • 長期的な価値より初期費用
  • 修繕性より見た目

家計を考えれば、これは自然な反応です。

しかし住宅は、安く買えればよいという商品ではありません。

断熱性能、気密性能、耐震性、換気、空気質、耐久性、メンテナンス性。 これらは、建てた後の暮らしに長く影響します。

初期費用を下げすぎると、後から光熱費、修繕費、住みにくさ、健康リスクとして戻ってくる可能性があります。

価格競争が品質低下につながるリスク

需要が縮小し、コストが上がると、住宅業界では価格競争が起こりやすくなります。

しかし、価格競争は長く続けられる戦略ではありません。

工務店が利益を削って受注すれば、一時的には契約につながるかもしれません。 しかし、利益が残らなければ、設計、施工管理、職人の確保、アフター対応、社員教育に十分な費用をかけにくくなります。

その結果、住宅の品質や長期的な維持管理にしわ寄せが出る可能性があります。

地域の工務店の価値は、家を建てることだけではありません。 建てた後、その家を長く見守り、必要な時に修繕し、住まい手の暮らしを支え続けることにもあります。

価格競争によって工務店の体力が失われれば、住まい手にとっても大きな損失になりかねません。

高性能住宅ほど「維持できるか」が問われる

近年の住宅は、高断熱化、高気密化、省エネ化が進んでいます。

これは基本的には良い方向です。 冬暖かく、夏涼しく、少ないエネルギーで快適に暮らせる住宅を増やすことは重要です。

ただし、高性能住宅には新しい課題もあります。

高性能住宅は、換気、空調、断熱、気密、電子制御、高機能部材などが組み合わさって性能を発揮しています。

つまり、住宅そのものが一つのシステムのようになっているのです。

  • 部材が高い
  • 修理できる人が少ない
  • 専用部品が手に入らない
  • メンテナンス費用を払えない
  • メーカー仕様が変わる

こうした状況になると、「高性能なのに維持できない住宅」が増える可能性があります。

これは、これからの住宅業界で非常に重要な論点になると思います。

住宅のインフラ化という問題

昔の住宅は、今の住宅ほど複雑ではありませんでした。

  • 木が傷めば直す
  • 壁が傷めば塗り直す
  • 屋根が傷めば葺き替える
  • 建具が壊れれば調整する

もちろん手間はかかりますが、構造が比較的単純で、部分的に直しながら住み続けることができました。

一方で、現代住宅は、設備と部材と制御に支えられています。

換気設備、空調設備、給排水設備、断熱材、気密部材、防水材、電子機器。 これらが組み合わさって、住宅の快適性や省エネ性能を支えています。

これは便利である一方、維持管理の難しさも生みます。

  • 換気が止まる
  • 電子機器が壊れる
  • 部材供給が止まる
  • メーカー対応が終了する

こうしたことが起きると、住宅全体の性能が大きく低下する可能性があります。

私はこれを、「住宅のインフラ化問題」と考えています。

住宅が高性能化するほど、建てる時の性能だけではなく、維持管理の仕組みまで含めて考える必要があります。

空気環境の視点から見た住宅のリスク

空気環境の視点から見ても、この問題は無関係ではありません。

高気密・高断熱住宅では、換気が適切に機能していることが非常に重要です。

  • 換気設備が止まる
  • フィルターが目詰まりする
  • 換気経路が設計通りに機能しない
  • メンテナンス不足で空気が滞る

このような状態になると、室内の湿気、におい、化学物質、ホコリなどが室内に残りやすくなる可能性があります。

また、現代住宅では、建材、接着剤、塗料、防水材、断熱材、設備部材など、さまざまな素材が使われています。

これらは便利で高性能な一方、室内空気質に影響を与える可能性もあります。

だからこそ、これからの家づくりでは、断熱性能や省エネ性能だけでなく、室内空気質やメンテナンス性も含めて考える必要があります。

家は、建てた瞬間だけ快適であればよいものではありません。 長く住み続ける中で、空気環境を健やかに保てることが重要です。

ハイテクとローテクをどう使い分けるか

これからは、ハイテクとローテクを冷静に使い分ける時代だと思います。

高性能な設備や工業製品が必要な部分はあります。 水回り、電気、換気、断熱、気密、防水など、現代住宅に欠かせない技術も多くあります。

一方で、すべてを複雑な設備や専用部材に頼る必要があるのかは、見直す余地があります。

木、土、石、漆喰、瓦。 こうした自然素材には、単なる見た目の良さだけでなく、「手を入れながら長く使う」という考え方があります。

便利さと長寿命性、施工性と空気質、コストと維持管理性。 これらをどう両立するかが、これからの家づくりで問われていくのかもしれません。

長く住み続けられる家を考える

住宅業界の危機は、単なるピンチではありません。

これからの家づくりを選び直すための問いでもあります。

  • 長く住み続けられること
  • 直しながら使えること
  • 空気が健やかであること
  • 維持管理できること
  • 地域の工務店が支え続けられること

こうした価値が、改めて重要になっています。

家は、単に建てるものではありません。 住み続けるものです。

そして、住み続けるためには、建てた後の空気環境、メンテナンス、修繕性、素材選びまで含めて考える必要があります。

住宅業界が大きな変化に直面している今だからこそ、私たちはもう一度、これからの家づくりのあり方を見直す時期に来ているのではないでしょうか。

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【引用の表記例】
引用:空気環境改善研究所のブログ
https://kuukanken.jp/blog-141/
  • この記事を書いた人

空環研_石坂

空気環境改善研究所代表理事 石坂閣啓(イシザカタカヒロ) 三浦工業株式会社入社後、三浦環境科学研究所に配属 その後愛媛大学に出向、大学院農学研究科の環境産業科学研究室の助教を経て独立。 室内中の124種類以上の化学物質が検出可能な「エアみる」を使った空気測定を使って令和のシックハウス対策に取り組む 専門:室内空気中の化学物質汚染

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