つぶやき

子どもの不調に、大人はどこまで気づけるでしょうか|シックハウス・香害と子どもの健康

子どもは、大人よりも室内空気の影響を受けやすいと言われています。その理由の一つは、体の大きさにあります。

子どもは大人より体が小さいため、吸い込む空気の量そのものは大人より少なくなります。しかし、体重あたりで考えると、子どもが吸い込む空気の量は、大人より多くなります。

つまり、同じ部屋で同じ空気を吸っていても、体の大きさに対する影響は、大人と子どもで同じではありません。だからこそ、子どもが過ごす家の空気には、大人が少し注意を向ける必要があります。

「重い空気が床にたまる」は、本当でしょうか

ここで一つ、よくある説明について、少し見方を変えてみたいと思います。

「化学物質を含む空気は重いので、床付近にたまりやすい。だから床に近い場所で過ごす子どもは影響を受けやすい」

このような説明を聞くことがあります。子どもの空気環境に注意を向けるきっかけとしては、わかりやすい説明です。ただ、室内空気の実際を考えると、これは少し単純化しすぎた見方でもあります。

一般的な住まいでは、空気はじっと止まっているわけではありません。人の動き、換気、エアコン、温度差、ドアの開け閉めなどによって、室内の空気は常に動いています。そのため、化学物質を含む空気だけが重さによって床付近にきれいにたまり続ける、という状態は、通常の暮らしの中ではあまり現実的ではありません。

本当に気をつけたいのは「ほこり」です

では、なぜ床付近で過ごす子どもの空気環境に注意が必要なのでしょうか。大切なのは、空気そのものが床にたまるという話よりも、床付近にたまりやすい「ほこり」です。

ほこりは、単なる汚れではありません。家の中のさまざまなものが集まったものです。

  • 衣類や布製品から出る繊維
  • 外から入ってきた土や花粉
  • カビの胞子
  • 微粒子
  • 建材や家具、生活用品などに由来する化学物質(ほこりに付着することがあります)

子どもは床で遊びます。ハイハイをします。床に手をつきます。その手を口に持っていくこともあります。

つまり、子どもが影響を受けやすい理由は、「重い空気が床にたまるから」というよりも、床付近で過ごす時間が長く、ほこりや床材、生活用品に近い場所で暮らしているからです。ここを丁寧に見ることが、子どもの空気環境を考えるうえで大切だと思います。

この記事で、本当にお伝えしたいこと

ただ、この記事で本当にお伝えしたいことは、もう少し本質的な話です。それは、子どもの健康を守るには、大人が子どもの不調に気づいてあげる必要がある、ということです。

子どもは、自分の体調不良と環境の関係を、まだうまく説明できません。これは、空気や化学物質の話に限りません。

たとえば、プールで遊んでいる子どもを思い浮かべてください。唇が青くなるほど体が冷えていても、本人は楽しくて遊び続けてしまうことがあります。大人であれば、体が冷えてきたことに気づき、自分で休む判断ができます。しかし、子どもはそうとは限りません。だから大人が見て、「そろそろ水から上がろう」「少し体を温めよう」と声をかける必要があります。

室内空気の問題も、これに近いところがあります。子どもにこうした不調があっても、原因と環境を結びつけて考えることは、なかなかできません。

頭が痛い。
だるそうにしている。
鼻水が続く。
目をこする。
咳が出る。
機嫌が悪い。
眠りが浅い。

子ども自身が、「これは部屋のにおいのせいかもしれない」「この柔軟剤の香りが苦手なのかもしれない」「引っ越してから体調が変わったのかもしれない」と考えることは、なかなかできません。実は、大人でも難しいことです。

私自身の、子どものころの話

私自身、子どものころに、似たような経験があります。父の車に乗ると、私はかなりの確率で気分が悪くなりました。当時は「車酔いしやすい子ども」だと思われていたと思います。

もちろん、本当に車酔いもあったかもしれません。ただ、今振り返ると、車内のシートや内装のにおい、車の中の空気に反応していた可能性もあったのではないかと思います。いわゆる「シックカー」と呼ばれるような状態です。

当時の私は、それをうまく説明できませんでした。大人も、「車に酔いやすい子」と理解するしかなかったと思います。このように、子どもの不調は、本人にも原因がわからないことがあります。だからこそ、大人が注意深く見てあげる必要があります。

暮らしが変わったときこそ、注意を

もちろん、体調不良の原因は一つではありません。食べもの、睡眠、ストレス、感染症、アレルギー、衣類、温度、湿度。さまざまな要因があります。その中の一つとして、「室内の空気」や「化学物質」も考える必要がある、ということです。

特に注意したいのは、暮らしの環境が大きく変わったときです。

新築の家に入居したあと。
引っ越しのあと。
リフォームのあと。
新しい家具を入れたあと。
強い香りの柔軟剤や芳香剤を使い始めたあと。

こうしたタイミングで、子どもの様子が変わっていないかを見てあげることは、とても大切です。

近年は、「香害」と呼ばれる問題もあります。柔軟剤や芳香剤などの香りが強く、本人や周囲の人にとって負担になることがあります。子どもが何らかの体調不良を感じていても、それを「香り」や「空気」と結びつけて考えることは難しいかもしれません。だからこそ、できる範囲で負担になる要素を減らしてあげることが、大人の役割ではないかと思います。

化学物質は、特別な場所の話ではありません

化学物質と聞くと、特別な工場や実験室の話のように感じるかもしれません。しかし、実際には、私たちの暮らしの中にもあります。

  • 建材・家具・カーテン・カーペット
  • 洗剤・柔軟剤・芳香剤・消臭剤
  • 車の内装・新しいおもちゃ

それらをすべて悪者にする必要はありません。けれど、子どもが毎日触れ、吸い込み、過ごしている環境の一部であることは、知っておいた方がよいと思います。

家の空気を整えることは、大人の責任です

大人の役割は、子どもを過剰に守りすぎることではありません。不安を大きくすることでもありません。

子どもが自分では気づけない環境の変化に、大人が少し早く気づくこと。体調の変化と暮らしの変化を、少し丁寧に結びつけて考えること。そして、できる範囲で負担になるものを減らしてあげること。それが、子どもの健康を守るということだと思います。

室内空気の管理は、子ども自身に任せることはできません。家の空気を整えることは、大人の責任です。そしてそれは、子どもを不安から守るためではなく、安心して元気に過ごせる環境をつくるための、大切なケアなのだと思います。

一般社団法人 空気環境改善研究所
代表理事 石坂 閣啓(農学博士)

気になる不調は、家の空気が関係しているかもしれません

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  • この記事を書いた人

空環研_石坂

空気環境改善研究所代表理事 石坂閣啓(イシザカタカヒロ) 三浦工業株式会社入社後、三浦環境科学研究所に配属 その後愛媛大学に出向、大学院農学研究科の環境産業科学研究室の助教を経て独立。 室内中の124種類以上の化学物質が検出可能な「エアみる」を使った空気測定を使って令和のシックハウス対策に取り組む 専門:室内空気中の化学物質汚染

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