「シックハウス問題はもう終わった」と思われることがあります。しかし実際には、住宅性能や使用される化学物質が変化したことで、新しい視点から室内空気を考えることが大切になっています。
こんな言葉を聞いたことはありませんか?
「シックハウスなんて、もう終わった話でしょう?」
「今の建材は対策されているから大丈夫」
「F☆☆☆☆だから問題ない」
「自然素材だから安心」
確かに、こうした言葉には理由があります。それでも、室内空気を考えるうえで見落とされがちな点が残っています。
昔より改善された。それでも終わったわけではありません
先ほどのような言葉のとおり、昔のように社会問題となった典型的なシックハウスは大きく減りました。
ホルムアルデヒド対策、クロルピリホスの規制、二十四時間換気の義務化、室内濃度指針値の整備など、建築業界や行政による取り組みが進み、多くの住宅でリスクは低減しています。
現在でも、シックハウス症候群に関する相談は少なくありません。
つまり、社会問題としては落ち着いてきたものの、シックハウス問題そのものがなくなったわけではないのです。
規制された物質の代わりに、新しい物質が使われています
これまで問題となってきたホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどは、建材や接着剤、塗料での使われ方が大きく変化しました。
その結果、昔のような典型的なシックハウスは起こりにくくなっています。
一方で、規制された物質の代わりに別の化学物質が使われるようになりました。これは製品性能を維持するためには自然な流れです。
ただし、その代替物質が室内空気中でどの程度放散され、生活環境の中でどのような影響を持つのかについては、十分な知見が蓄積されているとは限りません。
毒性が以前より低い物質であっても、次のような条件が重なると、体調不良につながる可能性があります。
- 室内濃度が高い場合
- 発生量が多い場合
- 換気が十分でない場合
- 化学物質に敏感な方がいる場合
いわゆる「代替物質によるシックハウス」という視点も、現在では重要になっています。
高気密・高断熱住宅だからこそ換気が重要です
現代住宅は、高断熱・高気密化が進んでいます。これは冬暖かく、夏涼しく、省エネルギーにもつながる優れた住宅性能です。
一方で、気密性が高いということは、自然には空気が入れ替わりにくいということでもあります。そのため、二十四時間換気が適切に機能していることが非常に重要になります。
- 二十四時間換気を止めてしまう
- 給気口をふさいでしまう
- 新築・リフォーム直後で放散量が多い
- 香りの強い生活用品を多用する
このような条件では、室内空気が悪化しやすくなる可能性があります。
また、二十四時間換気が稼働していても、発生源が多い場合には十分とは限りません。状況に応じて窓開け換気を組み合わせることも、室内空気環境を整えるうえで有効です。
「健康」の考え方も変わってきています
国の基準や規制は、発がん性や急性毒性など重大な健康リスクを防ぐために非常に重要です。しかし、私たちが日々感じる健康は、それだけではありません。
- よく眠れること
- 朝すっきり起きられること
- 頭痛やだるさが少ないこと
- アレルギー症状が強く出ないこと
- 子どもが元気に遊べること
- 家の中で気持ちよく深呼吸できること
特に、小さなお子さんがいる家庭や、化学物質に敏感な方がいる家庭では、「基準値以下だから問題ない」と単純には言えない場合もあります。健康を考える視点は、人によって異なるからです。
SVOCやほこりにも目を向けましょう
代表例として、フタル酸エステル類のような可塑剤があります。これはプラスチックを柔らかくするために使われる成分で、アレルギー症状や喘息、アトピーとの関連が研究されているものもあります。
ヨーロッパでは、予防原則の考え方から、子ども向け製品などで使用を制限する動きも見られます。
フタル酸エステル類が多く含まれる素材の例として、石油系の塩ビクロス(ビニルクロス)やクッションフロアなどがあります。これらの建材は、使い続けるうちに可塑剤成分が劣化し、少しずつ室内へ放散されていく傾向があります。長く使うほど、室内への影響が大きくなると考えられます。ですので、建材選びにも気をつけたいところです。
また、こうした物質の一部はVOCとは異なり、ほこりへ付着しやすい性質を持っています。
シックハウス問題は、防ぐことができます
私は、化学物質そのものを否定したいわけではありません。現代の暮らしは、多くの化学物質によって支えられています。
だからこそ、大切なのは「知らずに使うこと」ではなく、「正しく理解して付き合うこと」だと考えています。
今日からできる対策
- 窓を開けて換気する
- 二十四時間換気を止めない
- 給気口をふさがない
- 新しい家具やカーテンは十分に換気する
- 柔軟剤や芳香剤など香りの強い製品を使いすぎない
- 必要に応じて室内空気の状態を確認する
まとめ
シックハウス問題は、昔のような社会問題としては大きく改善されました。しかし、住宅性能や使用される材料、生活用品が変化した現在では、新しい視点で室内空気を考える必要があります。
大切なのは、不安をあおることではありません。昔の規制物質だけを見るのではなく、現在の住宅で使われている建材や家具、生活用品、換気、そして住まい方まで含めて考えることです。
一般社団法人 空気環境改善研究所
代表理事 石坂 閣啓(農学博士)
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