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見えない空気があなたの脳を鈍らせる_空環研通信Vol.16_2025年3月

室内の空気と健康、仕事のパフォーマンスへの影響とは?

室内の空気をどれくらい気にしていますか?私たちは普段、室内の空気をどれほど意識しているでしょうか?空気は目に見えませんが、その中にはさまざまな化学物質が含まれています。特に、VOC(揮発性有機化合物)は 健康や集中力に影響を与える ことが分かっています。また、最近の研究では、VOCが 免疫力の低下や、記憶力・判断力の低下を引き起こす可能性 があることが明らかになっています。

今回は、最新の研究事例を交えながら、VOCと健康、そして仕事のパフォーマンスの関係について詳しく解説 します。

動画で確認(7分)

①空気の汚れと免疫力の関係

VOCとは、ホルムアルデヒドやトルエン、ベンゼンなどの化学物質の総称で、主に 建材や家具、塗料、接着剤 などから発生します。
いわゆる 空気の汚れ です。

これらの汚れは 喘息や呼吸器アレルギーの発症に関連 しているという報告があり、免疫低下にも関係している という研究結果があります。

これまで喘息やアレルギーについては取り上げてきましたが、今回は 免疫低下 について掘り下げます。

空気の汚れが免疫低下に影響するという研究事例

2018年から2020年に発表された研究をまとめると、VOCに長期間さらされると免疫細胞が異常に活性化する ことが分かっています。

免疫細胞とは?

免疫細胞は本来、ウイルスや細菌といった外敵を排除する役割 を持っています。
つまり、免疫は 体の中の警察官 のような存在です。

免疫は体の中の警察官のような役割

しかし、VOCを大量に吸い込むことで、免疫細胞が暴走し、正常な細胞まで攻撃してしまう という現象が確認されています。
この過剰な免疫反応が 慢性的な炎症を引き起こし、結果的に免疫力を低下 させてしまうのです。

免疫が暴走

さらに、VOCは免疫細胞のバランスを崩す作用もあります。
これにより、外部からのウイルスや細菌に対して適切に対応できなくなる ため、感染症にかかりやすくなる可能性があります。


②空気の汚れがが脳に与える影響

空気の汚れは 免疫力だけでなく、脳の働きにも影響 を与えます。

例えば、夏の暑い日に部屋の空気がこもると、なんとなく ぼんやりして集中しにくくなる ことがあります。
これは単に温度の影響だけではなく、室内のVOC濃度が上昇し、脳の働きが鈍くなっている可能性 があるのです。

最新の研究:VOCと集中力の関係

2023年の研究では、空気の汚れが作業効率には影響しなかったそうなのですが、脳波に影響を与えていることが確認されました。実際にの影響は出ていませんが、ぼんやりしやすくなることがあるのかもしれません。さらに、2025年の最新研究では、温度とVOC濃度の組み合わせが判断力や集中力に与える影響 が調査されました。

空気の汚れと温度が脳を鈍らせる?

この研究では、

  • 温度23℃・温度28℃の2条件
  • VOC濃度100mg/m³と1000mg/m³の2条件

この組み合わせで4つの環境を作り、集中力を測るテストが実施されました。

結果として、28℃で空気の汚れが多い部屋では、ミスの回数が5.2回増加 しました。

さらに、「目が疲れる」「空気が悪いと感じる」 といった症状を訴える人も多かったとのことです。
これは、温度と空気の汚れが組み合わさることで、判断力や集中力が低下する ことを示しています。


空気環境を改善し、パフォーマンスを向上させる方法

では、空気の汚れを減らし、脳のパフォーマンスを向上させる にはどうすればいいのでしょうか?

1. 換気を徹底する

オフィスや住宅には24時間換気システムが設置されていることが多いですが、実際の換気量は 1時間に部屋の空気の半分が入れ替わる程度 です。
そのため、空気の汚れの蓄積を防ぐために、定期的に窓を開けて外の空気を取り入れること が大切です。

2. VOCを除去できる空気清浄機を活用する

一般的な空気清浄機は ほこりや花粉を取り除く機能 がメインですが、VOCを分解できるタイプもあります。

  • 活性炭フィルター付きで、UVランプ搭載タイプのものを選ぶと、VOCを吸着し分解する効果が得られます。

こういった空気清浄機を取り入れることで、室内の空気を大幅に改善できます

3. 観葉植物を取り入れる

観葉植物はVOCの分解能力がありますが、決して十分な効果があるわけではありません。また土壌の微生物がVOCを分解するという報告もあります。土壌自体が吸着効果を持っているため、土があることは良いことです。植物が多い空間は気分も良くなりますので、快適な住まいづくりとってプラスに働きますね。

【深堀】空気の汚れとは:石油化学製品由来の化学物質を指します

今回の研究で取り上げられている空気の汚れとしてのVOCは石油化学製品由来のトルエン、エチルベンゼン、キシレン、ベンゼンなどです。これらの化学物質は人為的に作られたものです。石油化学製品からは似たような性質のVOCが発生することがあります。一般的に自然素材がよいというのはこれらの成分が含まれないためです。ただし、天然のものだからすべて良いかというわけではなく、成分と濃度によります。

 

まとめ

空気の汚れは、免疫力の低下や集中力・判断力の低下を引き起こすリスクがあります。
特に、高温でVOC濃度が高い環境では 判断ミスが増え、体調不良を感じる人が多くなる ことが研究で確認されています。

室内の空気を整えることは、健康を守るだけでなく、仕事のパフォーマンス向上にもつながる 重要なポイントです。
日々過ごす空間の空気を見直し、より快適で健康的な生活を目指しましょう。


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  • この記事を書いた人

空環研_石坂

空気環境改善研究所代表理事 石坂閣啓(イシザカタカヒロ) 三浦工業株式会社入社後、三浦環境科学研究所に配属 その後愛媛大学に出向、大学院農学研究科の環境産業科学研究室の助教を経て独立。 室内中の124種類以上の化学物質が検出可能な「エアみる」を使った空気測定を使って令和のシックハウス対策に取り組む 専門:室内空気中の化学物質汚染

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