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長期型シックハウスと防蟻処理の選択肢:農薬からホウ酸へ_空環研通信Vol.19

こんにちは、空気環境改善研究所の石坂です。
前回は「初期型シックハウス」について解説しました。
今回はその続編として、「長期型シックハウス」と、それに関わる防蟻処理のリスクと選択肢についてお話しします。

📺 動画でご覧になりたい方はこちら(約14分)
https://youtu.be/tywWhCk-AIk

なお、新築時やリフォーム後に発生しやすいVOCが原因の「初期型シックハウス」については、こちらの記事で詳しく解説しています:
👉 初期型シックハウスとは?

 

長期型シックハウスと化学物質の蓄積

空気に含まれる化学物質は、大きく分けて「ガスとして漂う軽い物質(VOC)」と「ホコリなどに付着しやすい重い物質(SVOC)」があります。
長期型シックハウスは、この後者に該当するSVOC(Semi-Volatile Organic Compounds、準揮発性有機化合物といいます)によって引き起こされる健康影響です。

SVOCは、可塑剤やシロアリ対策などにつかわれる防蟻処理農薬に多く含まれており、揮発しにくく、時間をかけて少しずつ空気中に放出されるため、住んでから数年〜十数年経ってから症状が現れるケースが多いのが特徴です。埃につきやすいため、頻繁に埃掃除をしていないと濃縮・蓄積されます。

特に、日中家にいる時間が長い人、家事を多くこなす主婦層に影響が出やすく、年齢的には40代〜60代にかけて徐々に化学物質に対する感受性が高くなる傾向が見られています。

つまり、時間をかけて体に蓄積され、知らない間に体調に影響を及ぼすタイプの住環境リスクなのです。

なぜ農薬が家に使われてきたのか?その歴史とリスク

「農薬って、外で使うものでは?」と感じる方もいるかもしれません。
実際には、住宅建築においてはシロアリ対策のために農薬が使用されてきた歴史があります。

その背景には、「リスクのトレードオフ」の考えがあります。
シロアリが家の柱などを食べてしまうと、家の耐震性が低下し、大地震の際には倒壊のリスクが高まります。
つまり、「命を守るために」シロアリ対策が必要だったというわけです。

かつては「クロルピリホス」という農薬が使われていましたが、これは発がん性があるとして2002年に使用が禁止されました。
その後、より安全性が高いとされる「ネオニコチノイド系農薬」が主流になっています。

しかしながら、このネオニコチノイドも完全に無害というわけではありません。
ヨーロッパではミツバチの大量死の原因として規制が強化され、日本でも化学物質過敏症の引き金になるケースが報告されています。

ネオニコチノイドとは?

“ネオ”=新しい、“ニコチノイド”=ニコチン様物質。
つまり、「新しいニコチン系農薬」という意味です。

実際、マウスを使った動物実験では以下のような結果が報告されています:

  • 攻撃性の増加

  • 育児放棄

  • 食行動の異常(子を食べてしまうなど)

これは、神経系や精神面に悪影響を及ぼす可能性があることを示しています。
しかも、これらの農薬は医薬品と違って人体での臨床試験が義務付けられていません
動物実験で「死ななかった」「発がん性が確認されなかった」という基準で使用が許可されているのが現状です。

より安全な防蟻処理「ホウ酸」の可能性

防蟻処理=農薬、というイメージが一般的かもしれませんが、実はより安全性が高く、効果が長く続く選択肢として、「ホウ酸」を使った方法があります。

ホウ酸とは?

ホウ酸は、私たちの体にも必要なミネラルの一種であり、食事や水からごく少量(1日あたり1〜3mg)を自然に摂取しています。
哺乳類にとっては体内に入っても尿として排出され、蓄積されないため安全性が高いとされています。

ホウ酸処理の特長と効果

  • 水に溶けやすいため、雨水などに触れる場所には使えませんが、床下・壁の中・屋根裏などの乾燥した箇所には適しており、効果は半永久的に持続します。

  • 農薬処理と異なり、約5年ごとの再処理が不要なため、長期的に見ればメンテナンスコストも抑えられます

特に、建築時でなければアクセスできない場所(壁裏・床下など)においては、農薬では再処理が困難かつ効果の持続も期待できないため、ホウ酸が非常に有効な手段となります。

家族の健康と経済性を両立

  • 小さなお子様

  • 高齢者

  • 化学物質に敏感な方

これらの家族構成においても、安全性が高いホウ酸処理は理想的な防蟻処理の選択肢となります。

ホウ酸処理は信頼できる歴史ある技術

ホウ酸による木材保存処理は、古代エジプトやバビロニアの時代から使われてきたとされる伝統的かつ信頼性の高い技術です。

たとえば、名器「ストラディバリウス」のバイオリンにも、木材保存の一環としてホウ酸処理が施されていたという説もあります。

現在では、アメリカ・ニュージーランドなどの木造住宅大国でホウ酸処理が一般的に採用されており、日本でも徐々にその有効性が認知されてきています。

住まいは家族の健康を守る場所であるべきです。

農薬を使う必要性も理解しながら、「より安全な選択肢としてのホウ酸処理」という考え方が、今後ますます重要になるでしょう。

特に梅雨時期や雨上がりの夜など、シロアリが活発に飛び交う時期は要注意。
もし室内でシロアリを見かけた場合は、すでに建物内部に侵入している可能性があります。

そうしたときは、専門業者や当研究所へのご相談をぜひご検討ください。

おまけ:ホウ酸のうたをつくりました

まとめ

  • 長期型シックハウスは、SVOCのような揮発しにくい化学物質が体内に蓄積されて起こります。

  • 従来の農薬処理は命を守るための対策である一方、安全性が十分に検証されていないリスクもあります。

  • ホウ酸処理は、安全性・効果の持続性・コスト面の優位性を兼ね備えた選択肢です。

特に、梅雨時期や雨上がりの夜間などはシロアリの飛来が多くなるタイミングです。
万が一、室内でシロアリを見かけた場合は、すでに建物内部に巣を作っている可能性もあるため、早めの対策が必要です。

🏠 小さなお子様やご高齢の方が暮らす住まいには、より安全性の高いホウ酸処理をおすすめします。


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  • この記事を書いた人

空環研_石坂

空気環境改善研究所代表理事 石坂閣啓(イシザカタカヒロ) 三浦工業株式会社入社後、三浦環境科学研究所に配属 その後愛媛大学に出向、大学院農学研究科の環境産業科学研究室の助教を経て独立。 室内中の124種類以上の化学物質が検出可能な「エアみる」を使った空気測定を使って令和のシックハウス対策に取り組む 専門:室内空気中の化学物質汚染

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